ベルトコンベアを使用していると、しばしば「蛇行」と呼ばれる現象が発生します。
そのまま放置しておくとラインが止まってしまったり事故やトラブルが発生したりするおそれがあるため、しっかりと防止策を施すことが大切です。
この記事ではベルトコンベアの作動中に蛇行が生じる原因や蛇行予防策について解説します。
蛇行が発生して困られている方はもちろん、ベルトコンベアを使用されているすべての方に見ていただきたい内容です。
ベルトコンベアの蛇行とはどんな状態?
ベルトコンベアの蛇行とは、コンベアベルトが左右のどちらかにずれた状態で走る現象のことを指し、「片寄り」と呼ばれることもあります。
蛇行が発生しても多くの場合ただちにベルトコンベアが停止するわけではありませんが、そのままにしておくと非常に危険であるため、早急な対応が必要です。
蛇行が孕む危険性
ベルトコンベアに蛇行が生じることで、コンベアベルトに摩耗や破損が発生する、ベルトの脱落や荷こぼれが発生してラインの停止や搬送物の破損などにつながるといったおそれがあります。
また、ベルトコンベアの故障や火災、人身事故などが発生するなど、蛇行にはさまざまなリスクを孕んでいるのです。
ベルトが蛇行する主な原因
コンベアベルトが蛇行する原因は張力バランスが取れていない、清掃が不十分で異物が付着している、ベルトやプーリー(ベルトを回すための滑車)、ベルトコンベアのフレームの不具合などさまざまです。
他にもプーリーのクラウン(ベルトの片寄りを防ぐための機構)が足りない、プーリーの強度が足りていないといった要因も考えられます。
まずはコンベアベルトがなぜ蛇行してしまうのか?原因を特定しない限り、蛇行を改善することはできません。
ベルトコンベアの蛇行調整方法
以上のようにコンベアベルトの蛇行原因はさまざまですが、不具合が発生している箇所を特定し、そこを調整していけば蛇行が改善できる可能性があります。
ここからは原因・箇所別に蛇行を改善するための調整方法についてご紹介します。
01|テークアップ(張力調整)
コンベアベルトの張力調整は、ベルトを低速で回転させながら駆動プーリーやテークアッププーリーの位置を微調整しながら行います。
張力バランスが整ってくれば、コンベアベルトが中心に戻って蛇行が治まる可能性があります。
02|プーリーの確認
通常であればコンベアベルトはプーリーに対して直角で当たっています。
たとえばベルトを交換した後に蛇行が生じる場合は再度プーリーの張力調整が必要となります。
また、前述のとおりプーリーそのものやクラウンの量に問題がある場合も考えられます。
今一度使用しているプーリーが適切なものであるかどうかを確認してみましょう。
03|ローラーの確認
ローラーとはコンベアベルトを支える部品のことです。
ローラーの精度が適正か?水平であるか?ローラー間の通り芯が出ているか?ローラーは平行になっているか?を確認し、不具合を調整することでローラーを起因とする蛇行が治まる可能性があります。
04|コンベアベルトの確認
コンベアベルトは張力がかかり続けるため、徐々に伸びていくこともあれば、逆に油や塩分などで縮むこともあります。
ベルトの長さが変化すると左右バランスが崩れて蛇行が発生することがあります。
張力調整でも改善されない場合、コンベアベルトに著しい劣化が見られる場合、前回の交換から期間が経過している場合は、ベルトの交換も視野に入れましょう。
05|フレームの確認
ベルトコンベアのフレームが老朽化している場合、平衡が失われて蛇行することがあります。
また、設置場所が平らでない場合も、やはりフレームの平衡が失われることがあります。
アジャスタボルトでベルトコンベアの平衡を維持することで、蛇行が改善できる可能性があります。
06|清掃状態の確認
その他、コンベアベルトが汚れていると、異物がプーリーやローラーに付着して張力バランスや摩擦に影響を及ぼし蛇行が発生することがあります。
また、異物がベルトに付着していると各部品の不具合にもつながるため、定期的な清掃やメンテナンスを心がけましょう。
清掃を行うだけでも蛇行が改善される可能性があります。
ベルトコンベアの蛇行防止策
コンベアベルトが蛇行した場合は早急な対応が必要ですが、重要なのは蛇行が発生しないように日頃から対策をしておくことです。
定期的に以下でご紹介するようなメンテナンスを行うよう心がけましょう。
01|張力を原因とした蛇行の防止策
まず蛇行の原因として挙げられるのが張力バランスの異常です。
張力を起因とした蛇行を防ぐためには「テークアップ機構の調整・見直し」と「エア/電動シリンダの導入」という2つの対策が有効です。
以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
テークアップ機構の調整・見直し
テークアップとはコンベアベルトの張力を適切に調節することを指します。
ベルトコンベアには駆動プーリーのほかにテークアッププーリーが設置されていて、これが張力バランスを保ってくれているのです。
前述のとおり、ベルトを低速で回転させながら駆動プーリーとテークアッププーリーの位置を微調整します。
テークアップについては、「テークアップとは?コンベアベルトにおいて重要な張力調整」で、詳しく解説をしておりますので、ぜひお読みください。
エア/電動シリンダの導入
プーリーの軸を左右から押したり引いたりすることで張力バランスを適正に保つことができます。
通常はボルトやおもりなどでプーリーの位置を調整するケースが多いのですが、エアシリンダーや電動シリンダを導入すれば、センサーで自動的にベルトの張力を調整してくれて蛇行を防ぐことができます。
おもりやボルトよりも高価になりますが、トラブル防止のための投資として導入も検討してみてください。
02|その他の蛇行防止策
張力以外の原因でコンベアベルトが蛇行することもあり得ます。
特に「適切なクラウン加工がされたプーリーを使用する」「Vガイド加工が施されたコンベアベルトを使用する」「逆Vトラフローラ―を採用する」という方法で蛇行を防ぐことが可能です。
プーリーのクラウン加工
クラウン加工が施されているプーリーを採用することで、蛇行を防ぐことが可能です。
ただし、クラウンの量が適正ではない場合、蛇行が生じることがあります。
また、複数箇所にクラウン付きのプーリーを使用するのも蛇行が発生する原因です。
プーリーを選定する際にはクラウンにも着目してみましょう。
コンベアベルトのVガイド
Vガイド加工が施されたコンベアベルトの採用も効果的です。
VガイドとはコンベアベルトにV字型の溝を彫る加工のことです。
ベルトにVガイドを施すことで、走行が安定して蛇行が起こりにくくなります。
また、ベルトの下側にVガイドを取り付けることも可能です。
逆Vトラフローラ―
逆Vトラフローラーをリターン側のベルトの上側に取り付けることでも蛇行を防ぐことができます。
ローラーが逆V字状に配置されていて、これによってベルトの張力が調整されます。
大きな事故やワーク停止になる前にメンテナンスを!
コンベアベルトの蛇行は重大な損失や事故、その他トラブルに発展するおそれも高いので、放置せずに原因を究明し、適切な調整を行うことが重要です。
ただし、原因が特定できない、調整しても蛇行が改善されないというケースもあるかもしれません。
その際には株式会社ベルコンにご相談ください。
弊社はベルトコンベアのプロフェッショナルです。
しっかりと原因を追求し、最適な方法をご提案します。