ベルトコンベアにはいくつかの種類があり、構造もさまざまです。もし作業現場でベルトコンベアを使用することがあれば、その構造に関する知識が業務に役立つはずです。
この記事では、ベルトコンベアの種類と特徴について知りたい方のために、それぞれの種類ごとの特徴やメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。また、ベルトコンベアと比較していただくために、その他のコンベアの特徴も併せてご紹介しますので参考にして下さい。
目次
そもそもコンベアとは?
コンベアとは、上に荷物を置いて搬送するための設備です。工場や、砕石現場、物流倉庫、空港、回転寿司のカウンターなど、さまざまな場所で活用されています。
コンベアは荷物を搬送するだけではなく、受け渡しの役割も担っています。たとえば工場の流れ作業では、移動してくる製品を作業員が加工し次の工程へ移ります。
コンベアの種類
コンベアにはさまざまな種類がありますが、最も幅広く利用されているものはベルトコンベアです。その他にもチェーンコンベア・駆動ローラコンベア・スクリューコンベア・振動コンベア・流体コンベアなどがあります。
ベルトコンベア
ベルトコンベアは、幅の広い一本の輪状のベルトをモーターで駆動するプーリーで回転させることによって、ベルトの上に積載した荷物を搬送させるコンベアです。
構造が簡単でメンテナンス性に優れている、設置するための費用が安いといった特徴があり、汎用性が高いため幅広い業界で使用されています。
メリット
1.長距離の搬送に有効
ベルトコンベアは、他のコンベアと比較すると簡単な構造なため、長いコンベアを設置しやすく、長距離の搬送に適しています。構造が簡単ゆえに、コンベアの距離を延ばしたい場合でも複雑な工事を必要としません。
2.衝撃を吸収しやすい
多くのベルトコンベアはゴムベルトを使用しており、弾力性があるため、搬送物の衝撃を吸収しやすいこともメリットです。採石場やコンクリート工場などで使用されているベルトコンベアは非常に過酷な環境下で使用されますが、ゴムベルトが砕石を搬送する際の衝撃を吸収するため、コンベアが受けるダメージも軽減され、問題なく使い続けることができるのです。
デメリット
1.テンション調整が不可欠
ベルトコンベアはおもにゴム製のコンベアベルトを使用しているため、スムーズに搬送し続けるには一定のテンション(張力)が必要です。ゴム製のベルトは長期間使用し続けると伸びてくるため、定期的にテンション調整を行わないとベルトが緩んでしまいます。
2.ベルトの蛇行などの不具合が発生する
コンベアベルトを回転させているプーリーは、必ずベルトがプーリーの中央に位置するように調整する必要があります。これを怠るとベルトが蛇行しやすくなります。蛇行が発生すると、積載物が落下しやすくなったり、フレームと摩擦を起こしてベルトが損傷してしまったりすることもあります。
ベルトコンベアの種類
- ゴムベルトコンベア
ベルトに弾力と柔軟性があるため、搬送物の衝撃による損傷が少なく、耐久性が高いことが特徴です。 - 金属ベルトコンベア
頑丈で重量物の積載が可能なこと、衛生的で耐熱性が高いことが特徴で、食品関係の搬送に適しています。 - 樹脂ベルトコンベア
樹脂は他の材質に比べて軽く、加工が容易なため、現場の都合に合わせたコンベアを設置しやすいことが特徴です。 - スチールベルトコンベア
金属製の中でも特に耐久性が高く、耐腐食性もあるコンベアで、錆びを防ぎたい現場での使用に適しています。
チェーンコンベア
チェーンで造られたコンベアの上に荷物を載せて搬送するタイプの装置です。カーブのあるルートを通る、高温下で使用する、重量物を搬送するなど、ベルトコンベアには適していない環境でも搬送できるコンベアです。
種類が多いことも特徴で、バケットコンベア・ネットコンベア・エプロンコンベア・スラットコンベアなどさまざまな種類のチェーンコンベアがあります。
メリット
1.負荷のかかる環境に強い
チェーンコンベアは金属製で頑丈な造りになっているため、ベルトコンベアでは対応できないようなな重量物の搬送に適しています。搬送する際の力強さがあり、負荷のかかる状態や、傾斜のあるルートでも問題なく搬送することができます。
2.応用範囲が広い
チェーンコンベアは高い耐久性を持ち、種類も多いため、幅広い業種で使えることもメリットです。さまざまな業務内容に合わせた形状のコンベアが開発されているので、現場に適したチェーンコンベアが見つかるでしょう。
デメリット
1.速度が遅い
チェーンコンベアは機械的に複雑な部分が多く、ベルトコンベアと比べると速度が遅いことがデメリットです。チェーンを回転させるスプロケットの歯数が少ない場合は、速度を変動させにくいので注意が必要です。
2.定期的に給油が必要
チェーンコンベアは潤滑油によってスムーズに駆動する仕組みになっているため、定期的に給油が必要です。給油が必要な部分が多くて手間がかかりますが、給油を欠かすと駆動部分が摩耗したり、熱が発生したりするので、故障の原因となります。
チェーンコンベアの種類
- バケットコンベア
チェーンコンベアにバケットが設置されているタイプで、エレベーター状に上下移動する仕組みになっています。 - ネットコンベア
金属製のネットを駆動させて荷物を搬送するタイプのコンベアで、搬送途中で脱水、乾燥などを行えることが特徴です。 - エプロンコンベア
左右のコンベアチェーンにエプロンを設置し、移動するエプロンの上に荷物を載せて搬送するコンベアです。
駆動ローラコンベア
同一方向に回転するローラの上に乗せられた荷物を搬送するタイプのコンベアです。パレット・タイヤ・段ボール・ケース状の荷物などの搬送に適しており、途中分岐や合流、カーブするルートなど、さまざまな搬送に対応できます。
駆動ローラコンベアには、チェーン駆動ローラコンベア・モータローラ駆動ローラコンベア・ラインシャフト駆動ローラコンベアなどがあります。
メリット
1.臨機応変な搬送方法が可能
駆動ローラコンベアでは、搬送途中に荷物を一時的に貯留させることができるので、臨機応変な運用が可能です。コンベアを停止させる必要がなく、搬送ルートも途中で分岐・合流できるので、スムーズな流れ作業が行えます。
2.コンベアの調整が容易
駆動ローラコンベアは、回転するローラのトルクを調整することによって速度を調整しますが、スパナ1本で簡単にトルクを調整できます。コンベアが稼働中でも調整できるので、ラインの流れ作業を妨げることもありません。
デメリット
1.設備の費用が高額
駆動ローラコンベアは、全ての搬送ルートにローラが配置されているため、搬送距離が長くなればなるほど費用が高額になります。コンベア全体の重量も大きくなるので、設置する際の工事にもかなりの手間と費用がかかります。
2.搬送できる荷物が限られる
駆動ローラコンベアで搬送できる荷物は、ある程度の重量と面積のあるものに限られます。ローラ上で搬送するため滑りやすく、軽い荷物の搬送には向いていません。また、ばら物などの小さな荷物はローラの隙間から落ちてしまいます。
駆動ローラコンベアの種類
- チェーン駆動ローラコンベア
チェーンを駆動することによってローラを回転させるコンベアで、中程度の荷重から重荷重まで対応できます。 - モータローラ駆動ローラコンベヤ
内蔵するモーターでローラを同一方向に回転させることによって荷物を搬送するタイプの駆動ローラコンベアです。 - ラインシャフト駆動ローラコンベヤ
ドライブシャフトを動力源とし、プーリーが回転してローラに動力を伝えることにより荷物を搬送できるコンベアです。
スクリューコンベア
箱状のトラフや円柱状の管の中に、らせん形のスクリューが配置されており、密閉された空間で回転することによって内容物を搬送するコンベアです。おもに工場などで使用されており、粉塵や強い臭いを発生させる物体のほか、有害物質など飛散させられない物体の搬送に適しています。
スクリューコンベアに向いていない搬送物は、粘度が高く詰まりやすい物質や、スクリューを破損させるほど硬い物質です。
メリット
1.完全密閉されている
スクリューコンベアは完全に密閉されているので、液体・気体・粒状の物体など、他のコンベアでは搬送が難しいものを扱うことができます。また、完全密閉されていることにより、臭いや粉塵を周囲にまき散らすことなく搬送できます。
2.傾斜面や上下搬送に適する
スクリューコンベアは密閉された構造になっているため、傾斜面での搬送や上下搬送でも問題なく行えます。傾斜面や上下動の搬送の場合は、コンベア内の物体が重力によって圧縮されるため、計量しやすいこともメリットです。
デメリット
1.搬送できる物体が限られる
スクリューコンベアは密閉された空間の中で搬送する仕組みなので、粘度が高く詰まりやすい物体を搬送することはできません。また、スクリューの動きを妨げるほどの大きな物体や、スクリューを傷つけるほど硬い物体も搬送が不可能です。
2.メンテナンス性が悪い
スクリューコンベアは密閉構造のため、メンテナンスに手間がかかります。もしも搬送物が詰まりを起こしたり、内部で塊になってしまったりすれば、大がかりな修理が必要になる場合もあるので注意が必要です。
スクリューコンベアの種類
- リボンスクリューコンベア
羽根が軸から少し離れた位置に設置されており、リボンのように見えるスクリューコンベアで、粘度の高い物質の搬送に適しています。 - フルブレードスクリューコンベア
羽根が軸に対して隙間なく設置されている「フルブレードスクリュー」を使用したスクリューコンベアです。 - パドルスクリューコンベア
軸の一部分に「パドル」と呼ばれる小さな羽根が設置されており、土砂の取り込み過ぎを防ぐことができるコンベアです。 - スクリューチューブコンベア
チューブの中でスクリューを回転させるコンベアで、経路を曲げることができるため、狭いスペースでも使用できます。 - フレキシブルスクリューコンベア
フレキシブルスクリューコンベアも、チューブ内でスクリューが回転するコンベアで、スパイラルスクリューを使用しています。
振動コンベア
物体を積載する部分を振動させて搬送するタイプのコンベアで、進行方向に向かって振動が加えられることにより物体を搬送します。振動コンベアには、振動モーターを使用したタイプと、汎用モーターを使用したタイプがあります。
構造がシンプルなため、保守・点検が比較的容易で、搬送物が通過するトラフは鋼板製になっていて耐久性が高いです。
メリット
1.さまざまな搬送物に使用できる
振動コンベアは、頑丈な鋼板製のトラフの中を搬送物が通過する仕組みになっているため、高温の物体・硬い物体・腐食しやすい物体などさまざまな搬送物の運搬に使用できます。比較的少ない電力で振動させられるため、搬送物の量が多くてもスムーズに搬送することができます。
2.メンテナンスが容易
振動コンベアはトラフが上部に広く開放されており、鋼板製のため清掃がしやすく、常に清潔に保つことができます。トラフは蓋をして使用することもできるので、搬送物の飛散を防げてコンベアの外側も汚れにくくなります。
デメリット
1.重量物の搬送には適していない
振動コンベアが起こす振動は微動のため、重量物を移動させるにはエネルギーが不足しています。また、重量物を積載した状態でトラフを振動させると、トラフの損傷にもつながるので、重量物の搬送には向いていません。
2.設備自体の寿命が短い
振動コンベアが搬送時に起こす振動は、設備全体に継続的に衝撃を与え続けるため、使用するたびに少しずつダメージを受けています。そのため、他のコンベアと比較すると、やや設備の寿命が短くなりやすい傾向があります。
振動コンベアの種類
- 振動モーター
振動モーターには強制形と共振形の2種類の振動コンベアがあり、ロータリーバイブレータ(RV)などを使用しています。 - 汎用モーター
汎用モーターを使用する振動コンベアは、汎用モーターがクランク軸との組み合わせでコンベアに振動を起こして搬送します。
流体コンベア
円筒状の管の中を流れる流体を媒体として搬送するコンベアです。おもにばら物の搬送に使用され、空気圧送コンベア(空気コンベア)と水コンベアの2種類があります。
空気圧送コンベアはコンベアの底に密閉されたトラフがあり、そこから送られる圧縮空気によって、ばら物を搬送します。バキュームコンベアと呼ばれる吸引式のコンベアもあります。
メリット
1.設置が簡単
流体コンベアは、設備を構成する部品の点数が少ないため、設置の手間があまりかかりません。仕組みが簡単なため設計の自由度が高く、コンベアの搬送経路もある程度現場の都合に合わせて柔軟に対応することができます。
2.搬送以外の目的にも使用できる
流体コンベアはパイプ状の構造のため、搬送に使用するだけではなく、物体を吸引したり噴射したりすることもできます。パイプ状なため、内容物が途中で飛散することがなく、逆に外部からの異物混入もほとんどありません。
デメリット
1.メンテナンスに手間がかかる
流体コンベアはパイプ状の構造のため、内部を常に清潔に保っていなければ詰まりを起こす可能性があります。詰まりが発生すると修理が大変なため、日常的なメンテナンスが必要で、その分ランニングコストがやや高額です。
2.搬送物が限られる
流体コンベアは、おもにばら物の搬送を目的としている設備のため、かさのある物体を搬送することには向いていません。また、重量物の搬送をするには圧力が不足しており、途中で詰まりを起こす可能性が高いため不適切です。
流体コンベアの種類
- 空気圧送コンベア
おもに空気を媒体として搬送するコンベアで、ばら物の搬送に適しており、圧送式と吸引式、およびそれらの併用式があります。 - 水コンベア
水を媒体として搬送するコンベアで、同じくばら物の搬送に使用され、スラリポンプ式や水路式などがあります。
各種コンベアの比較一覧表
ここまで各コンベアの特徴やメリット・デメリットをご紹介してきましたが、その内容を一覧表に簡単にまとめてみました。コンベアというとベルトコンベアのイメージが強い方も多いと思いますが、用途によって全く姿の異なるコンベアが多く存在しています。
それぞれのコンベアの特徴を理解したうえで、メリットを活かして設備を導入すれば、業務の大きな効率化につながるでしょう。
ベルトコンベア | チェーンコンベア | 駆動ローラコンベア | スクリューコンベア | 振動コンベア | 流体コンベア | |
---|---|---|---|---|---|---|
構造図 | ||||||
特徴 | 〇長距離搬送 〇衝撃吸収性 |
〇耐候性 〇応用範囲の広さ |
〇臨機応変な搬送 〇調整の容易さ |
〇密閉性 〇搬送方向の自由度 |
〇搬送物の幅広さ 〇調整の容易さ |
〇設置の容易さ 〇搬送以外にも対応 |
弱み | 〇定期的なテンション調整 〇蛇行の発生 |
〇速度が遅い 〇定期的な給油 |
〇コストが高い 〇ワーク(搬送物)の制限 |
〇ばら物の搬送が基本 〇メンテナンス性が悪い |
〇重量物の搬送に弱い 〇設備自体の寿命が短い |
〇メンテナンスの手間 〇ワーク(搬送物)の制限 |
種類 | ・ゴムベルトコンベア ・金属ベルトコンベア ・樹脂ベルトコンベア ・スチールベルトコンベア |
・バケットコンベア ・ネットコンベア ・エプロンコンベア |
・チェーン駆動ローラコンベア ・モータローラ駆動ローラコンベヤ ・ラインシャフト駆動ローラコンベヤ |
・リボンスクリューコンベア ・フルブレードスクリューコンベア ・パドルスクリューコンベア ・スクリューチューブコンベア ・フレキシブルスクリューコンベア |
・振動モーター -強制形 -共振形 ・汎用モーター |
・空気圧送コンベア ・水コンベア |
使用されている業界 | ・プラント ・製造業 ・採掘現場 ・砕石場 etc. |
・製造業 ・食品加工 ・飲料業界 ・物流 etc. |
・製造業 ・食品加工 ・飲料業界 ・物流 etc. |
・食品加工 ・医療品 ・農業 ・建築設計 etc. |
・製造業 ・鋳物業界 ・飲料業界 ・化学工業 etc. |
・食品加工 ・農業 ・化学工業 etc. |
弊社が得意とする コンベア |
◎ | ◎ | 〇 | ◎ | △ | × |
まとめ
コンベアには、ベルトコンベアの他にも実にさまざまな種類のものがあります。コンベアがいかに便利で、業務の効率化に大きく貢献しているかを実感していただけたかと思います。こうした知識を身につけることで、メンテナンスが適切にできるようになる、トラブルにも冷静に対応できるようになる、現場に適したコンベアが選定できるようになるなど、さまざまなメリットが得られます。
今後もこのサイトではベルトコンベアに関するさまざまな情報を発信していきます。現場でベルトコンベアを有効に活用するために、幅広い知識を身につけ、日々の業務に役立てていただければ幸いです。