ベルトコンベアの導入やコンベアベルトの交換を行う際には「エンドレス加工」という工程が必要になる場合もあります。エンドレス加工によってベルトコンベアやコンベアベルトの耐久性や平面性などが変わってくるため、非常に重要な工程です。
この記事ではエンドレス加工の概要や種類、方法や流れについてご紹介します。ベルトコンベアを導入される方は、ぜひ念頭に置いておいてください。
エンドレス加工とは
エンドレス加工とはコンベアベルトを接合する加工のことを指します。そもそもベルトコンベアは輪状になったコンベアベルトをプーリー(滑車)で回転させ、コンベアベルトの上に荷物を乗せることで搬送するという仕組みです。
コンベアベルトは最初から輪状になっているわけではありません。プーリーに巻きつける際にエンドレス加工を施してはじめて輪状になります。また、ベルトコンベアを延長もしくは縮小させる際も、コンベアベルトの長さを調整するためにエンドレス加工を行います。
エンドレス加工の種類
エンドレス加工には「自然加硫接合」「熱加硫接合」「金具接合」という3つの種類があります。それぞれどのような加工なのか?その特徴について見ていきましょう。
自然加硫接合
自然加硫接合とは接着剤を用いてコンベアベルトを接合する方法です。研磨できれいにしたコンベアベルトの端面にゴムを溶剤で溶かした主剤と、それを反応させるための硬化剤を塗布します。ムラが出ないように2回接着剤を塗って、しっかりと接合するよう圧力をかけつつ凹凸を埋めます。その後養生することでコンベアベルトの端面同士がしっかりと接合するのです。
以前は強度が他の方法と比較すると低かったのですが、近年では接着剤の品質が向上し、後述する熱加硫接合と遜色ない強度が出せるようになりました。また、加工にあたって大掛かりな設備や機材が不要なので、一般的によく用いられる方法です。ただし、天候によって接着性能にばらつきが出る、高温下では強度が低下するといったデメリットもあります。
熱加硫接合
熱加硫接合とはその名の通り熱を加えてコンベアベルトを接合させる方法です。ゴムは加熱すると柔らかくなり、冷やすと再び固くなります。コンベアベルトの端面同士を熱し、プレスをかけることで接合します。
接着剤を用いた自然加硫接合と比較すると強度が高いことと、養生が不要であるため加工後にすぐに使用できる点がメリットです。一方で加工コストが高いことと、エンドレス加工を開始するまでに時間がかかるというデメリットもあります。
金具接合
金具接合とはフックやピンなどの金具を用いてコンベアベルトを接合する方法です。熱を加える必要がなく、熱加硫接合と比較して低コストで行える、現場で施工できるというメリットがあります。一方で接合部の強度は熱加硫接合と比較すると弱くなってしまうのがデメリットです。
エンドレス加工のジョイント方法
エンドレス加工のジョイント(接合)方法にはさまざまなものがあり、どれを選択するかによって耐久性や平面性が大きく変わってきます。それぞれの特徴について見ていきましょう。また、わかりやすいよう耐久性や平面性を◎、〇、△、×の4段階で評価しました。
オーバーラップジョイント
コンベアベルトの両端を重ねて接合する方法で、もっともポピュラーな接合方法です。端面を90°に切断する方法と、45°に切断する方法の2種類があり、特に前者は高い張力に耐えることができます。
- 耐久性◎
- 平面性△
バットジョイント
ベルトの両端面を突き合わせ、その下に裏打材を接着して、コンベアベルト同士を接合させる方法です。端面の切断方法によって90°、45°という2種類があり、さらに端面をV字カットして耐屈曲性をアップさせたVギザやフィンガーといった方法もあります。
- 耐久性〇
- 平面性◎
フィンガージョイント
端面の部分を曲線状もしくはV字状に切断し突き合わせて接着する方法です。曲線になった部分、V字になった部分が噛み合うため、耐屈曲性に優れ、橋や高速道路の接合部にもフィンガージョイントの技術が応用されています。
- 耐久性◯
- 平面性◯
スカイバージョイント
接合部を斜めに削って接合する方法です。フィンガージョイントよりもさらに接合部の強度が高くなります。端面部を重ねて接合するオーバーラップは耐屈曲性が非常に高いです。パット方式の場合は平面性も非常に優れており、バランスが取れている工法といえます。
- 耐久性◯
- 平面性◯
ウィービングジョイント
コンベアベルトの芯には帆布などが使われています。ウィービングジョイントは芯部の縦糸と横糸をいったんほぐし、交互に絡ませ合いながら接合する技術です。
- 耐久性◯
- 平面性◯
金属レーシング
金属レーシング(アリゲーター)と呼ばれる金具をコンベアベルトの端面に装着し、ピンを通して接合する方法です。平面性、耐久性とも他の方法と比較すると若干劣りますが、現場で施工しやすいというメリットがあります。
- 耐久性△
- 平面性△
クロスレーシング
クロス製のレーシングをコンベアベルトの端面に装着し、ピンを通して接合する方法です。金属レーシングと同様に現場で施工しやすいというメリットがあり、応急処置に適しています。
- 耐久性△
- 平面性△
ループレーシング
メッシュタイプのコンベアベルトに用いられるエンドレス加工法です。ベルトを縫い合わせて接合します。やはりこちらも現場施工が高い方法です。
- 耐久性△
- 平面性△
エンドレス加工の基本工程
①けがき(しるしをつける作業)
裁断する場所(接合部)がわかるよう線を引きます。
②断面加工(ステップ加工)
コンベアベルトの張り合わせ部を階段状に加工、裁断面の汚れ取り除ききれいにします。
③仮合わせ
裁断したベルト同士が正確に合うか確認します。
④研磨(バフィング)
裁断面を磨いて凹凸をなくし、さらに表面をきれいな状態にします。
⑤接着剤塗布
コンベアベルトの端面に接着剤を塗布し、接合します。
⑥圧着
接合部に圧力をかけ、接着剤が乾燥するまで養生します。
延伸ベルトのエンドレス加工
コンベアベルトのエンドレス加工はベルトの装着や交換作業時に行います。また、延伸コンベアを導入する際にも必須です。延伸コンベアとは長さを延長したベルトコンベアのことで、特に大規模な建設現場やトンネル掘削工事現場などで用いられます。現場によっては数Kmにも及ぶ場合があり、それだけコンベアベルトが必要となり、エンドレス加工の重要性も高まります。
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