ベルトコンベアは、多くの工場や物流現場で欠かせない搬送装置ですが、「動かない」というトラブルに見舞われることも少なくありません。こうした停止トラブルは現場の生産性や納期に大きな影響を及ぼすため、迅速かつ的確な対応が必要です。
しかし、原因が多岐にわたるため、やみくもに触るのはかえって状況を悪化させることもあります。この記事では、ベルトコンベアが動かなくなる主な原因や具体的な対処法、現場でまず確認したいチェックポイントや状態別のトラブルサイン、さらにプロによるメンテナンスの重要性まで詳しく解説します。
目次
- 1 ベルトコンベアが動かない時は
- 2 ベルトコンベアが動かない時の原因と対処法
- 2.1 考えられる原因①:ベルトの剥離
- 2.2 考えられる原因②:ベルトの破損
- 2.3 考えられる原因③:ベルトの消耗・摩耗
- 2.4 考えられる原因④:ベルトの蛇行・ずれ
- 2.5 考えられる原因⑤:ベルトのテンション
- 2.6 考えられる原因⑥:モーターの故障
- 2.7 考えられる原因⑦:プーリーの損傷
- 2.8 考えられる原因⑧:ベアリングの不具合・破損
- 2.9 考えられる原因⑨:レールの摩耗・破損
- 2.10 考えられる原因⑩:スプロケットの摩耗・破損
- 2.11 考えられる原因⑪:ギアヘッドの故障
- 2.12 考えられる原因⑫:チェーンが外れている
- 2.13 考えられる原因⑬:チェーンの劣化
- 2.14 考えられる原因⑭:シャフトの折れ
- 2.15 考えられる原因⑮:コントローラーの故障
- 2.16 考えられる原因⑯:異物の混入
- 2.17 考えられる原因⑰:電源が入っていない
- 3 ベルトコンベアの状態別の原因
- 4 総合的なメンテナンスの実施
- 5 原因がはっきりしないときは
ベルトコンベアが動かない時は
ベルトコンベアが突然動かなくなった際には、まずは落ち着いて状況を把握することが大切です。むやみに触るのではなく、基本的な部分から順に確認していきましょう。たとえば、電源の有無や非常停止ボタンの状態、異音や異臭が発生していないか、ベルトに目立った損傷がないかなど、目視や感覚で分かる範囲からチェックを進めます。
トラブルの原因は、ベルト自体の損傷や摩耗だけでなく、駆動部やコントローラー、さらには搬送物の詰まりや異物混入など多岐にわたるため、順序立てて調査することがむしろ再稼働への近道です。必要に応じて作業を一時停止し、安全を確保した上で原因を特定しましょう。
ベルトコンベアが動かない時の原因と対処法
ベルトコンベアが動かない原因はさまざまです。以下では、現場で特に発生しやすい代表的な17の原因と、それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。トラブルを未然に防ぐためのヒントや、万一発生した場合の適切な対応についてもご紹介します。
No | 考えられる原因 | 確認方法 |
---|---|---|
① | ベルトの剥離 | ベルト表面の目視だけではなく、横から見たときの内部の層の剥がれも確認しましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
② | ベルトの破損 | 見落としてしまうような小さな破損もコンベアに影響することがあるため、触手点検を必ず行いましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
③ | ベルトの消耗・摩耗 | 定期的にベルトの厚みの測定をすることで、消耗具合を把握しましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
④ | ベルトの蛇行・ずれ | ベルト自体の目視による確認だけでなく、走行中に載せている搬送物の動きをよく観察しましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑤ | ベルトのテンション | ベルト張力計やテンションメーターを使用しましょう。ベルトごとによって張力の適正は変動します。 ※詳細と対処法はこちら |
⑥ | モーターの故障 | 異音や発熱、焼け焦げた臭いなどの異臭が兆候として現れることが多いので、視覚、音でよく観察してみましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑦ | プーリーの損傷 | 異音や振動、テンションの緩み、溝の摩耗など、様々な症状が現れますので、視覚、音でよく観察してみましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑧ | ベアリングの不具合・破損 | 異音や発熱・ガタつきなどが兆候として現れることが多いので、視覚、音でよく観察してみましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑨ | レールの摩耗・破損 | レール自体の目視による確認だけでなく、走行中に載せている搬送物の動きをよく観察しましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑩ | スプロケットの摩耗・破損 | 異音やガタつきは勿論、歯の欠損によりチェーンが外れているなど、比較的見つけやすいトラブルです。 ※詳細と対処法はこちら |
⑪ | ギアヘッドの故障 | 他とは比べものにならない異常な音や過度の発熱、油漏れなどが兆候として現れることが多いです。 ※詳細と対処法はこちら |
⑫ | チェーンが外れている | チェーンの箇所をすべて目視でチェックしましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑬ | チェーンの劣化 | ベチェーンの箇所をすべて目視でチェックしましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑭ | シャフトの折れ | キーキーという摩擦音や、ガリガリという金属音、または異常な振動音が聞こえることがあります。 ※詳細と対処法はこちら |
⑮ | コントローラーの故障 | コントローラーのリセットや接続ケーブルの緩みを確認しましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑯ | 異物の混入 | 目視でチェックしましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
⑰ | 電源が入っていない | 目視でチェックしましょう。 ※詳細と対処法はこちら |
考えられる原因①:ベルトの剥離
ベルト表面や内部の層がはがれてしまう現象です。長期間の使用や過剰なテンション、異物が噛み込んだままの運転、使用環境(高温・湿気)によって、ベルトの接着部分が剥がれやすくなります。剥離が進むとベルトの強度が著しく低下し、最終的には搬送が完全に止まるリスクがあります。
対処法
ベルトの剥離が見られた場合は、速やかに運転を停止し、ベルトを点検・交換してください。小規模な剥離であれば補修用の接着剤やパッチを使って一時的に対応できることもありますが、根本的な解決にはベルト全体の交換が推奨されます。また、再発防止のためには適切なテンション管理や、定期的なメンテナンスが重要です。
考えられる原因②:ベルトの破損
ベルトが切れる、裂ける、大きな穴が開くなどの物理的な破損は、突発的な負荷や搬送物の詰まり、老朽化などが原因で発生します。特にベルトの継ぎ目やエッジ部分は損傷しやすく、破損が広がると安全装置が作動してベルトコンベアが停止することがあります。
対処法
ベルトの破損が確認された場合は、応急処置ではなく、できるだけ早く新しいベルトに交換されることをおすすめします。一時的な補修では再発のリスクが高まるため、交換後は破損の原因となった要因(過剰荷重・異物混入・経年劣化)もあわせて見直しましょう。
考えられる原因③:ベルトの消耗・摩耗
ベルトは長期間の使用で徐々に表面が摩耗し、厚みが減少します。摩耗が進行するとグリップ力が低下し、搬送物の滑りやズレ、最終的には動作不良や停止の原因となります。特に粉塵や摩耗性を引き起こしやすい搬送物を扱う現場では早期に摩耗が進む傾向があります。
対処法
定期的な目視点検や、ベルトの厚みを測定することで消耗の進行具合を確認しましょう。摩耗が著しい場合は、早めのベルト交換を検討してください。摩耗の原因となる異物や粉塵をできるだけ除去し、ベルトクリーナーの設置なども有効です。
考えられる原因④:ベルトの蛇行・ずれ
ベルトが本来のレールから外れて蛇行したり、片側にずれてしまう現象は、テンションの不均衡やローラー・プーリーの位置ずれ、フレームの歪みが主な原因です。蛇行が続くとベルト自体の損傷や搬送物の落下、摩耗の進行を招きます。
対処法
ベルトのテンションや各ローラー、プーリーの取り付け位置を確認・調整しましょう。必要に応じてフレームの歪みやガイドローラーの状態も点検し、問題がある場合は修正します。蛇行を繰り返す場合は、設計上の問題や部品の劣化が疑われますので、専門業者への相談も検討してください。
考えられる原因⑤:ベルトのテンション
ベルトのテンション(張力)が適切でない場合、ベルトの滑りや蛇行、駆動不良が発生しやすくなります。張りすぎはベルトやベアリングへの負担が大きく、逆に緩すぎるとスリップや搬送物のズレにつながります。
対処法
張力を測定し、メーカー推奨値に合わせて調整を行います。専用のテンションゲージを用いると精度良く調整が可能です。テンション調整はベルトの寿命やベルトコンベア全体の稼働安定性に大きく影響するため、定期的なチェックと記録を心がけましょう。
考えられる原因⑥:モーターの故障
ベルトコンベアの心臓部ともいえるモーターが故障すると、コンベア自体が全く動かなくなります。経年劣化や過負荷、絶縁不良、異常電流などが主な要因であり、異音や発熱、焼け焦げた臭いなどが兆候として現れる場合があります。
対処法
モーターから異常音や異臭がする場合は、すぐに電源を切り、専門業者に点検・修理を依頼してください。簡易的な点検としては、ブレーカーやヒューズの確認、配線の緩みなども見落とさずにチェックしましょう。修理が難しい場合はモーターの交換も検討します。
考えられる原因⑦:プーリーの損傷
プーリー(駆動・従動輪)は、ベルトの動力伝達に欠かせない部品ですが、表面の摩耗や芯ブレ、割れなどの損傷があるとベルトが正常に駆動できません。損傷がひどい場合はベルト自体も痛めてしまいます。
対処法
プーリー表面の摩耗や割れが見られる場合は、早急に新品への交換が必要です。取り外しの際は軸やキー溝の損傷も併せて確認し、必要に応じて修理・交換を行います。プーリーの芯出し調整も定期的に実施してください。
考えられる原因⑧:ベアリングの不具合・破損
ローラーやプーリーを支えるベアリングが破損・焼き付き・グリス切れなどで不具合を起こすと、スムーズに回転しなくなり、最終的にはベルトコンベアが停止してしまうこともあります。異音や振動がサインです。
対処法
ベアリングの異常を感じたら、まずはグリスアップを試みます。異音・発熱・ガタつきがある場合は、速やかにベアリングを交換してください。無理に稼働を続けると他の部品まで損傷するため、早期対応が重要です。
考えられる原因⑨:レールの摩耗・破損
ベルトやローラーが走行するレールが摩耗したり、曲がったり、破損していると、ベルトがスムーズに動かず詰まりや蛇行の原因となります。長期の使用や重荷重を扱う現場で特に多い症状です。
対処法
レールに歪みや摩耗、破損を発見した場合は、速やかに補修や部分交換を行いましょう。定期的にレール点検を行うとともに、レール面の清掃や異物除去も忘れずに行うことでトラブル防止につながります。
考えられる原因⑩:スプロケットの摩耗・破損
チェーン駆動式コンベアの場合、スプロケット(歯車)が摩耗したり歯が欠けたりすると伝達力が落ちて動かなくなることがあります。異音やガタつきが発生するのがサインです。
対処法
スプロケットの歯が摩耗・欠損している場合は、早めに新しいものに交換してください。チェーンの伸びや摩耗も併せて点検し、同時交換を行うことで安定稼働を実現できます。
考えられる原因⑪:ギアヘッドの故障
モーターからの動力を減速して伝えるギアヘッド(減速機)が故障すると、ベルトコンベアは力を伝えられず停止します。異常な音や油漏れ、過度の発熱はギアヘッド不良のサインです。
対処法
ギアヘッドに異音や漏れが見られる場合は、無理に稼働を続けず、メーカーや専門業者に点検を依頼してください。ギアの摩耗や潤滑油の管理状況もあわせて確認し、必要に応じて部品交換やオーバーホールを行いましょう。
考えられる原因⑫:チェーンが外れている
チェーン駆動のベルトコンベアでは、チェーンの脱落・外れがよく発生します。テンション不足やスプロケットの位置ずれ、チェーンの伸びなどが主な要因です。これを放置すると大事故につながることもあります。
対処法
チェーンが外れている場合は、まず動力を完全に停止し、手順書に従って正しい位置に再装着します。その際、スプロケットやチェーン自体の摩耗も確認し、必要であれば部品交換やテンション調整を行いましょう。
考えられる原因⑬:チェーンの劣化
チェーンは長期間使用すれば伸びや摩耗が進行し、適正な動力伝達ができなくなります。錆やグリス切れがあると早期劣化が進み、最終的には外れや破断のリスクもあります。
対処法
定期的なグリスアップや、伸び・摩耗の測定を実施し、メーカー推奨の基準値を超えた場合は早めの交換を行ってください。チェーンカバーの設置やメンテナンス頻度の見直しも有効です。
考えられる原因⑭:シャフトの折れ
コンベアのシャフトが折れると、ベルトやチェーンが正常に回転できなくなり、完全に停止します。シャフトの疲労や過剰な負荷、不適切な取付けが主な原因です。
対処法
折損が判明した場合は、必ず新品シャフトに交換し、同時に取付部の状態や設計の見直しも行ってください。再発防止には過負荷での運転を避けることと、定期点検による早期発見が有効です。
考えられる原因⑮:コントローラーの故障
ベルトコンベアの運転・停止を制御するコントローラーが故障すると、スイッチが反応しない・誤作動するなどのトラブルが発生し、動かなくなるケースが多いです。
対処法
コントローラーのリセットや接続ケーブルの緩みを確認し、改善しない場合はメーカーや専門業者による診断・修理が必要です。無理な配線変更は事故リスクが高いため、必ず専門家に依頼しましょう。
考えられる原因⑯:異物の混入
搬送ライン上に異物が混入すると、ベルトやローラー、駆動部に詰まりや噛み込みが発生し、ベルトコンベアが停止します。特に食品やリサイクル現場などは異物混入のリスクが高いです。
対処法
異物が確認されたら、電源を切り安全を確保してから異物を慎重に取り除きます。その後、再発防止のために現場の清掃や、ガードカバーの設置など異物混入対策を強化しましょう。
考えられる原因⑰:電源が入っていない
意外と多いのが電源のトラブルです。ブレーカーの落下、電源スイッチの切り忘れ、コンセントの抜けや断線など、初歩的な要因でコンベアが動かないこともあります。
対処法
まずは電源コードやブレーカー、非常停止ボタンなど、基本的な部分から確認しましょう。電源に異常がない場合は、配線やコネクタの接続状態も点検します。それでも復旧しない場合は、専門家による電気系統の診断が必要です。
ベルトコンベアの状態別の原因
ベルトコンベアが動かなくなるとまではいかなくとも、運転中に異音や振動、搬送物の落下など異常な状態が見られる場合は、それぞれに応じた点検が必要です。こうした症状を見逃すと、停止や重大な故障につながることもあるため、日々のチェックが非常に重要です。以下に状態別の主な原因とその対応策を紹介します。
異音がする
運転中に「ガラガラ」「キーキー」といった異音がする場合は、ベアリングの劣化やローラー、プーリーの損傷、ベルトの蛇行や異物混入が原因であることが多いです。また、金属同士が擦れるような音や断続的な打撃音がする場合、相当事態が深刻になっており、その後に重大トラブルが発生するおそれがあります。
異音の種類や発生箇所を特定し、必要に応じて運転を停止し点検してください。定期的なグリスアップや、消耗部品の早めの交換、異物混入対策も有効です。
振動している
ベルトコンベアのフレームや本体が通常よりも大きく振動している場合は、ベルトのテンション不良や蛇行、プーリーやローラーの芯ズレ、レールやシャフトの損傷、基礎の緩みなどが疑われます。振動が長期間続くと、構造部材へのダメージやベルトの破損リスクが高まるため、放置は厳禁です。
まずは運転を停止し、各部品の取り付け状態や軸のブレ、固定ボルトの緩みなどを徹底的にチェックしましょう。
搬送物が落下しやすい
搬送物がコンベアから頻繁に落ちるようになった場合、ベルトの蛇行・ずれや摩耗、テンションの不良、搬送物自体の過積載やサイズ不適合が主な原因です。また、ガイドローラーやサイドレールの変形・損傷も考えられます。
搬送物が落下すると生産効率の低下や二次被害にもつながるため、搬送物の安定した流れや安全を確保するためにも、原因ごとに的確な調整や補修が必要です。
総合的なメンテナンスの実施
ベルトコンベアのトラブルを未然に防ぐためには、日常的なメンテナンスの徹底が何より重要です。ベルトの張力や摩耗状態、ローラー・プーリー・ベアリングなど駆動部品の点検、異物の除去や清掃作業を定期的に実施することで、突発的な故障リスクを大幅に減らすことができます。点検記録を残しておくことで、不具合の早期発見や劣化傾向の把握が容易になり、計画的な部品交換やメンテナンススケジュールの作成にも役立ちます。
また、メーカーや専門業者による定期的な点検・保守もおすすめです。現場担当者だけでなく、設備全体を熟知したプロが点検することで、より高精度な状態診断と安全性の向上につながります。万が一トラブルが発生した際も、日々のメンテナンス記録が迅速な原因特定と復旧のカギを握ります。
原因がはっきりしないときは
上記でご紹介したような事柄をすべて確認してもベルトコンベアが動かない場合や、複数の不具合が絡んでいて現場で対処しきれない場合は、無理に自力で解決しようとせず専門家に相談するのが最善です。誤った処置や部品の取外し・調整で取り返しがつかない故障や事故を招くおそれがあります。
株式会社ベルコンではベルトコンベアの設計・製造はもちろん、修理やメンテナンスにも対応しております。ベルトコンベアが動かなくて困っている、原因がわからないという場合はお気軽にご相談ください。